とその心までが遠《とおざ》かって行って、折角の幼馴染《おさななじみ》も遂にはあか[#「あか」に傍点]の他人に等しいものになるであろう。よし時々に手紙の取りやりはして見ても感情の一致して行かない是非《ぜひ》なさを、こまごまと恨んでいる。それにつけて、役者か芸人になりたいと思定《おもいさだ》めたが、その望みも遂《つい》に遂《と》げられず、空しく床屋《とこや》の吉《きち》さんの幸福を羨《うらや》みながら、毎日ぼんやりと目的のない時間を送っているつまらなさ、今は自殺する勇気もないから病気にでもなって死ねばよいと書いてある。
蘿月は何というわけもなく、長吉が出水《でみず》の中を歩いて病気になったのは故意《こい》にした事であって、全快する望《のぞみ》はもう絶え果てているような実に果敢《はか》ない感《かんじ》に打たれた。自分は何故《なぜ》あの時あのような心にもない意見をして長吉の望みを妨《さまた》げたのかと後悔の念に迫《せ》められた。蘿月はもう一度思うともなく、女に迷って親の家を追出された若い時分の事を回想した。そして自分はどうしても長吉の味方にならねばならぬ。長吉を役者にしてお糸と添わしてやらね
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