でお姫さまが(これは黄金と言って貴重なものだ)と申しますと、炭焼き男は(こんなものは裏の山には幾らでもがす)と言って、小屋の裏へ伴れて行ったのでありますが、そこには自然金がごろごろ転《ころ》がっていましたので、お姫さまは(この男こそ私の夫たるべき人だ)と考えまして、早速結婚をし、その自然金を馬に積んで京都へ上ったというのであります。そして、黄金を見て、早速結婚をする気になったこの近代的お姫さまから生まれたのが、金売吉次《かねうりきちじ》だというのでありますが、これは単なる伝説のようでありまして、どこまで信じていいかわかりませんけれども、東北地方を金産地としての伝説としては、寔《まこと》に面白い話であります。

 産馬の方では、佐々木四郎高綱の、宇治川の先陣のときの池月《いけづき》(生※[#「口+姜」、621−下−5])の話が最も有名でありますが、池月と並び称されている磨墨《するすみ》もまた、南部|三戸《さんのへ》の産だったということであります。或る記録によりますと「源頼朝のとき宇治川先陣に有名な磨墨は三戸の産。生※[#「口+姜」、621−下−7]は七戸上野村より出で、熊谷直美の子小次郎
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