既に東北地方の東北地方らしい雰囲気――いかにも東北地方らしい味わい――というようなものが出ていまして、それが現代文学の上に縦に繋《つな》がっているということは、興味深いことであります。
 東北地方のそういう記録、伝記、昔話などのうちで、就中《なかんずく》、黄金に関するものや、産馬に関するものや、馬鹿|聟《むこ》に関する話など、現代文学に繋がるもののうちでは最も面白いもののようでありますが、黄金に就いては「黄金《こがね》花咲くみちのく[#「みちのく」に傍点]の……」というような歌もありますように、昔の人達は、東北地方をば自然金の産地のように思っていたようであります。黄金産出のことを記録してある最も古いものは『続《しょく》日本紀』であろうと思いますが、それによりますと、聖武《しょうむ》天皇の天平《てんぴょう》二十一年の二月、百済《くだら》の王敬福という者が、今の、宮城県遠田郡涌谷村字黄金迫の黄金神社附近から、黄金を獲《と》って朝廷に献じたのが、日本で黄金の発見された最初のようであります。今年から千百八十四年前のことであります。このとき、天皇は大いに嘉尚し給い、幣を奉じて畿内七道の諸社に告げ
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