ているのと同じような感じを、伸子には与えるのだった。――だが、今度はもう帰って来てくれないような気が伸子はするのであった。新聞に、洋装をした美しい女の窃盗犯人が、常習犯として捕えられたという記事が出ていたからだった。
三
美佐子は併しその朝十時頃になるといつものようにして帰って来た。
伸子はそのとき郷里の叔母への手紙を書きかけていたのであったが、彼女はそれをポケットの中にまるめ込んでしまった。
「まあ! 姉さん! 帰ってらしゃったの?」
伸子は驚きの眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みは》って言った。
「帰って来たわよ。」
「まあ! よく帰らしてくれたわね。」
伸子はそう言ってしまってから、大変なことを言ってしまったように思った。
「そりゃあ、帰らしてくれるわよ。伸ちゃんは、姉さんがどこへ行って泊まって来たかは知っているの?」
伸子は返事が出来なかった。併し彼女は、自分の疑惑をいっさい吐き出してしまおうかと考えた。もし姉が、自分の想像通り自分を女学校へ通わしてくれるために罪を犯しているものなら、彼女はむしろ郷里の叔母のところに帰って働いた方がいいと
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