って帰った。それがたいてい土曜日の晩であった。
「明日は日曜だからって、とうとう徹夜をさせられてしまったのよ。淋しかったでしょう? その代わり今にいいものを買って上げてよ。」
併し伸子は、そんな時に限って、姉の行動を疑わずにはいられないような新聞記事を読んでいるのだった。彼女が新聞を読むのは日曜の朝だけであったが、そこには若い女性の犯罪が幾つも報道されていた。男装をして大胆《だいたん》に強盗を働き廻る女性。良家の令嬢を装って窃盗《せっとう》をする不良少女。それらのどれに当《あ》て嵌《は》めて見ても、姉の美佐子の行動は当《あ》て嵌《は》まるのだった。そして注意して見ると、そんな時に限って、美佐子の洋服には青い草の汁がついていたり泥がついていたりした。一体姉はどんなところに務めているのだろうか? そして、どれだけの給料をもらっているのだろうか? 伸子の姉の職業に対する疑問は激しくなって行った。美佐子と伸子との生活に美佐子の投げ出す金額は、とても女事務員としての、給料とは思われなかったから。併し、美佐子はいつも無事に帰って来た。それは新聞記事の上で、その女性の犯人が巧妙に姿を晦《くら》まし
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