土竜
佐左木俊郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)灌木《かんぼく》と
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一鍬|毎《ごと》に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]《みひら》く
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一
灌木《かんぼく》と雑草に荒れた叢《くさむら》は、雑木林《ぞうきばやし》から雑木林へと、長い長い丘腹《きゅうふく》を、波をうって走っていた。
茨の生える新畑《あらばたけ》は、谷から頂へ向けて、ところ斑《まだら》に黝《くろず》んでいた。
梅三爺《うめぞうじい》の、一坪四銭五厘で拓《ひら》く開墾区域は、谷のせせらぎに臨んで建った小屋の背後《うしろ》から続いていた。
今は緑の草いきれ。はちきれるばかりの精力に満ちた青草は、小屋の裏から起こるなだらかなスロープを、渦を巻き巻き埋《うず》めつくしていた。青草の中には紅紫の野薊《のあざみ》の花が浮かびあがり、躑躅《つつじ》の花が燃えかけていた。そして白い熊
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