になれんですね。」
「ははは……」と、梅三爺は笑いの中から煙を吐き出した。「やっぱり、田舎《ざえ》の方が宜《よ》がすかな?」
「僕も今度は、一つ百姓をして見ようと思ってね。僕も、開墾でもやりたいと思っているのだが……」
 こう言って竜雄は、微笑《ほほえ》んではいたが、彼の計画は真摯《しんし》だった。
「あんだ等が百姓だなんて……百姓しねえたって、役場さ勤《で》るが、学校さでも勤《で》たら……」
「そのくらいなら……」と、竜雄は爺の言葉を遮《さえぎ》った。「――いや、百姓が一番だ。僕は、百姓したいから、東京へなんか行くのを止《や》めたんでね。でなけりゃ、まだ……」
「ほんでも、せっかく、今までやって、惜しがすぺちゃ。」
「僕なんか、最初っから間違っていたんですね。僕等は、百姓の子だから、百姓をやっていればよかったんですよ。まるで、もぐらもち[#「もぐらもち」に傍点]が陽当《ひなた》に出て行ったようなもんで、いい世間のもの笑いですよ。」
 彼は微笑みながら言った。そして、「全く、光を求めたもぐらもち[#「もぐらもち」に傍点]だったんだ。」と心の中に呟《つぶや》いた。
 併し梅三爺には、竜雄
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