りして、お笑止《しょうし》ごったちゃ。」
「父《おど》は馬鹿なごどばり言って……」
市平は尚、踏切番という仕事が、年寄りに取って、いかにいい職業であるかを説いた。自分達親子で、官舎の一部を借りることが出来るから、そして二人で月給を取れば、どんなに裕福であるか知れないこと、被服などももらえるし、第一物価が廉《やす》いことなどを細々《こまごま》と話した。
「一体、開墾して、父《おど》、一日なんぼになっけな。」
「ほだなあ、汝《にし》いだ頃から見れば、坪あだり五厘ずつあがったがら、七十五銭ぐらいにはなんのさな。天気がよくて、唐鍬《とうぐわ》せえ持って出れば、十六七坪は拓《おご》すから。」
「十六七坪も拓《おご》すの、なかなか骨だべちゃ?」
「うむ。ここは、開墾賃《おごすちん》もいい代わり、一鍬拓《ひとくわおご》すでねえがらな。深掘りだがんな。」
「踏切番は、初めの中は日給五十銭ぐらいなもんだげっとも、仕事は楽なもんだで、父《おど》!」
「五十五銭だっていいさ。日を並べられるもの。俺《おら》など、天気の悪《わり》えどぎ出来ねえがら、そうさな、一日四十銭平均にもなんめえで、きっと。」
市平は
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