みいり》があんのに……」
そこの土地を取上げられた小作人達、甚吉等はそれを見て、吐き出すように罵った。
併しこの場合は、地主達三人は、借手の要求のままに耕作中の畑の一隅を分割していたのでは、二重にも三重にも損なことを体験していた。彼等は私《ひそ》かな戦術をもって、一本の「住宅地分割貸地」の棒杭に合同したのだった。
「ちょっと考えると、斯うして遊ばして置いちゃ損なようだがね。なあに、町が直きそこまで拡って来てんのですもの。三人が一緒になって頑張ってれあ……」
「斯うして置けあ、なあに、一年も経たねえうちに、もう、皆んな住宅になって了いまさあ。」
そこで地主達に残されてある一つのことは、そこの住宅地を市街地に繋ぐ道路の計画であった。
「どんなにしても、二間道路よりゃ狭く出来ますめえが、坪十円で売って貰うことにしても……」
「馬鹿馬鹿しい! あんた! 道路にする土地を買っていられますか? 買手があって、われわれの方から売るんなら別問題ですがね。われわれは寄附して貰うんですな。」
「寄附して貰えるもんなら、そりや、勿論、それに越したことはありませんがね。」
「そこですよ。あんた!(土地の
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