、それは、斯うしてこれから、住宅地を貸すことにして、どんどん部落へ人を呼ぶんですよ。そうするてえと、部落はどんどん発展して来る。私達は地代がどっさり這入るし、あんたがたは商売が繁栄するってことになるじゃありませんか?」
「それはそうですね。じゃ一つ、御援助を願って、商人になりますかな。」
「俺の言ったのは、そう云う意味じゃねんだ。今に言わなくたって、わかるときが来るさ。一体全体百姓を廃めて、皆んな商人になれなんて、何処の世界にそんな馬鹿な話があるんだ。」

       二

 南向きの斜面は、雑木林の腕の中で、耕地から住宅地に整理された。
 混凝土の泥溝《どぶ》をもった道路が、青い雑草の中に砂利の直線で碁盤縞に膨れあがった。碁盤目の中には、十字に椹《さわら》の籬《まがき》が組まれた。雑草は雨毎に蔓延《はびこ》って行った。荒地野菊が地肌を掩い、姫昔蓬《ひめむかしよもぎ》が麻畠のように暗い林になって立った。蓼《たで》は細いちょろちょろの路をあけて、砂利の上にまで繁った。
「われわれから取上げやがって、ああして荒して置けあどうだと云うんだ。借手のつくまで、耕させて置けあ、幾らかなりの収穫《
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