だから、地主としちゃ、やっぱり地代のいい方さ貸すことになるね。全く、借手の誰彼を問題にしちゃいねえんだ。問題は、唯、地代なんだから……」
群山はそう言って頭から小作人達を抑えつけた。土地の使用目的から、地代で及ばない小作人達は、それ以上言葉ではもう何も出来なかった。
「お気の毒ですが、まあ、此処の地所はそう云うわけですから、あんたがたも一つ、百姓なんかやめて了って、商売でも始めたらどんなものでしょうね?」
河上が微笑みかけながら言った。この穏やかな地主の言葉に対しては、誰もさからわなかった。
「それさね。」
「そう云うことになれば、何んかで、出来るだけのことはいたしますから。店を開くと云うような場合には……」
斯う河上は更に付け加えた。
「資本金《もとで》でもあれば店も結構だが、われわれ、どうして商売など始められんべ? 工場さでも通うより仕方がなかんべ。」
「そこですよ。私の言っているのは……勿論、大したことは出来かねますがね。まあ、及ぶだけのことは……」
「併し、皆んな商売をやり出したら、一体、誰が買うんですかね?」
甚吉は煙草に火をつけながら、皮肉らしく言つた。
「ですから
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