……」
群山は、他の二人の地主に代って返事を与えた。
「馬鹿馬鹿しいっ! 百円からの地代払って、地代分だけも儲けられしめえ! 群山さん。そんな馬鹿なこと、あの禿頭にでも教えられたのかね?」
甚吉は太い腕を、胸の上に腕組みながら言った。群山の話の口調が、彼の地所に家を建てた男にそっくりであったから。
「併しね。此処へ、別に働かねえでも段当り百八十円からの金が湧いて来るってえのに、そこを畠にしていたんじゃ、全く勿体ねえですからなあよ。」
「勿体ねえ? ハハハ……」
重次郎が笑い出した。地主の野本は、笑い出した小作人の青年を、怪訝《けげん》そうに視詰めた。
「勿体ねえって云うんなら、住宅にすんのこそ勿体ねえ話だ。畠にして置けえあ、それこそいろんな食う物が湧いて来るのにさ。住宅にして了ったら、せえぜえ、塵埃《ごみ》が関の山だべ。」
「併し、黙って腕組みしていて、百八十円ずつの地代が這入って来んのですかんな。」
野本は斯う反駁した。
「幾ら地代が這入ったって、地代がその土地から湧くもんじゃあるめえがな。他所で働いて取って来る金じゃねえか?」
「何れにしろ、私等の懐中さ這入る分にゃ同じこと
前へ
次へ
全23ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐左木 俊郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング