どこへまで工場を建てるなんて。糞面白くもねえ。」
「われわれ、われわれの言い分を通さねえうちは、どんなことがあったって建てさせるものか。俺、何時か、甚さんに言ったことがあったけがよ。耕地を潰して工場を建てたって百姓をやめて職工になるものがあったって、金目にしてその工場から、耕地から収穫していた以上の収穫があればそんでいい筈だって。――ところが、いくら収穫があったって、われわれ、同じことなんだ。耕地を潰しちゃ奴等だけ膨らんで、われわれは一向に同じことなんだ。」
重次郎も、眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85]りながら、叫ぶように云うのだった。
「あそこへ工場を持って来るなんて、百姓するものは、一体、何処へ行って百姓をすれあいいんだ?」
「工場の方じゃ、われわれの耕地を潰して置きやがって、幾ら儲かったって、われわれには全然同じことなんだから、そんで、われわれも、黙っちゃいられなくなって来たんだ。馬鹿馬鹿しいにも程がある。」
七
部落の中央部にあった台地の上は、人家で埋め尽されて、完全に住宅街になっていた。
空から続く腕のように、南向きの斜面を抱込んでいた雑木
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