林は、何時の間にか伐払われて、赤黒青、三色の瓦に埋め尽されていた。そしてラジオのアンテナの竿がその屋根屋根から林立していた。
 瓦の海の沖の方では、空高く組まれた捲揚機が、カラカラカララララと、ひっきりなく鳴り、黒煙に濁った空から、鉄骨の長い手を差伸していた。大きな煙突がそのところどころから、幾本も幾本も、黒い煙を吐いていた。そして瓦の海は、隣り部落を乗越え、何処までも何処までも拡って、青葉の中に消えていた。
[#地から1字上げ]――一九三○・四・二五――



底本:「日本プロレタリア文学集・11 「文芸戦線」作家集(二)」新日本出版社
   1985(昭和60)年12月25日初版
   1989(平成元)年3月25日第4刷
底本の親本:「都会地図の膨張」世界の動き社
初出:「プロレタリア文学」
   1930(昭和5)年6月号
入力:林 幸雄
校正:浅原庸子
2002年3月12日公開
2005年12月17日修正
青空文庫作成ファイル:
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