山茶花
佐左木俊郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)顔を顰《しか》めたり

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)水|洟《ばな》をすすりながら

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ふご[#「ふご」に傍点]を取って、
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 平三爺は、病気で腰が痛むと言って、顔を顰《しか》めたり、自分で調合した薬を嚥《の》んだりしていたのであったが、それでも、山の畠に、陸稲《おかぼ》の落ち穂を拾いに行くのだと言って、嫁のおもんが制《と》めたにもかかわらず、土間の片隅からふご[#「ふご」に傍点]を取って、曲がりかけた腰をたたいたりしながら、戸外へ出て行った。
「落ち穂なんか、孩子《わらし》どもに拾わせたっていいのだから、無理しねえで、休んでればいいんですのに、爺《じん》つあんは……」とおもんは繰り返した。
「ほんでもな、ああして置くとみんな雀に喰《か》ってしまう。一かたまりの雀おりっと、いっぺんにはあ、一度団子して食う分ぐらい、わげなく喰《か》れでしまうがらな。――まあ、なんぼでも拾って来んべで。孩子《わらし》どもだのなんのって言って
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