》るのだが、すると、家の中から(何を持って参った?)と聞き返すのである。子供達はそこで(銭《ぜに》と金《かね》とザクザクと持って参った。)と一斉に呼び返す。そこで、二切ればかりずつの餅が、子供達各自の手に恵まれるのである。
大人達のチャセゴは、軒々を一軒ごとに廻るのではなく、部落内の、または隣部落の地主とか素封家《そほうか》とかの歳祝《としいわ》いの家を目がけて蝟集《いしゅう》するのであった。それも、ただ(アキの方からチャセゴに参った。)というばかりでは無く、何かと趣向を凝《こ》らして行くのである。歳祝いをする家でも生活が裕《ゆたか》なだけに、膳部を賑《にぎ》やかにして、村人達が七福神とか、春駒とか、高砂《たかさご》とかと、趣向を凝《こ》らして、チャセゴに来てくれるのを待っているのである。
一
子供達が飛び出して行ってしまうと、薄暗い電燈の下は、急にひっそりして来た。
「チャセゴの餓鬼《がき》どもが来んべから、早くはあ寝るべかな。」
妻のおきんは榾火《ほだび》を突つきながら言った。
「馬鹿なっ! そんなことは出来るもんでねえ。我家《われえ》の餓鬼どもだって行ってるん
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