ね。静かにして寝ていらっしゃい」
 鈴木女教員はそう言って、教室を出ていった。

       4

 午後の第一時間の授業が始まった。吉川訓導は生徒を連れて畑から運動場へ出てきた。
「じゃ、おい、みんなね、大急ぎでこの落ち葉を掻き集めてくれ」
 吉川訓導はそう言いながら、落ち葉を蹴《け》って歩いた。生徒たちは、わっ! といっせいに地肌を覆い隠している落ち葉を掻き集めにかかった。
「なるべく埃を立てないようにしてくれ。そして、集めた木の葉はいまみんなで掘ってきた穴のところへ運んでいって、積んでおいてくれ」
 窓にかけておいた洋服を取って着ながら、吉川訓導は言った。
「じゃいいかい。おい級長、あまり騒ぎ回らないようにするんだよ」
 吉川訓導はそう言って、行きかけながらポケットの中を探った。そして、急に驚いた表情で立ち止まった。
「おい! 蟇口を拾った人はないか?」
 吉川訓導はなおもポケットの中を掻き探りながら、生徒たちのほうへ戻っていった。
「拾わねえ、おれは」
「おれも拾わねえ」
 生徒たちはがやがやと吉川訓導の周囲を囲んだ。吉川訓導は未練らしく探りつづけた。
「あ、田中《たなか》の
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