に輝きながら、ひっきりなしにぱらぱらと散るのだった。そして、落ち葉にうずめられた運動場の一部は、まるで火の海のようにぎらぎらと陽の光を照り返していた。生徒たちは赤い顔をして落ち葉の中を駆け回っていた。白いシャツの吉川訓導の後姿がその中にちらりと見えた。
鈴木女教員は教員室を出ていった。
彼女は廊下を歩きながら、胸の轟《とどろ》きを感じた。彼女にとって、もっとも魅力のある数分間だった。
教室の入口の扉が一尺(約三〇センチ)ほど開いていた。彼女は目を瞠《みは》るようにして立ち止まった。心臓が急に激しい運動を始めた。教室の中には机の上に顔を伏せて、一人の女生徒が残っていたからだった。彼女はしいて気持ちを静めようと努めながら、静かに教室の中へ入っていった。
「房枝《ふさえ》さん」
鈴木女教員は軽くその女生徒の背中を叩きながら、低声《こごえ》に呼んだ。しかし、女の子は顔を上げなかった。鈴木女教員はその瞬間に、窓にかかっている洋服を思い出した。やはり目を覚まさないでいてくれるほうがいいのだと思った。鈴木女教員は房枝をそのままそっとしておくようにして、静かに窓際へ寄っていった。そして、しゃが
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