した精神的なものがあったのでございます。そしてそれは、ある教師の不道徳な行為から出発しているのでございます。そのある教師とは、やはり先生の膝下に教鞭《きょうべん》を執っている吉川訓導なのでございますが、わたしはその理由を詳しく証明いたしたくはございません。彼のやがての結婚が、もっとも的確にこれを証明してくれるからでございます。
わたしは先生の膝下にまいりましてから間もなく――甚だお恥ずかしいことですが、これはわたし一個人に関することでなく、千葉房枝の名誉にも関することですから、もう何もかも申し上げてしまいます――わたしは吉川訓導と、深い深い恋に落ちたのでした。そしてわたしたちは、お互いの愛情を交換すべく、一つの方法を思いつきました。わたしは雨の降らない日の休業時間には、決して生徒を教室の中に置きませんでした。そして吉川訓導は、シャツ一枚になって生徒とともに運動をいたしました。この二つの新しい運動奨励法は、校長先生をはじめ他の先生がたからたいへんほめていただいたのですが、吉川訓導はその洋服を、きっとわたしの受持ち教室の窓に投げかけておいたことをお気づきでございましたでしょうか。わたした
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