しまったのなら、ただ正直にそのことを先生に話しなさい。みんな先生がいいようにしてあげるから……あなたが正直に話しさえすれば、お金だって先生が出してあげてもいいわ」
 房枝は泣きだしそうな顔をした。そして、何か言いたそうに唇をひくひく動かしたが、そのままなにも言わずに、顔を伏せてしまった。
「房枝さん、あなたはどうして正直に言えないの? ではいいことよ。あなたのお父さんに来ていただいて、何もかもみんなお話しするから……」
「先生」
 房枝はそう言ったまま、そこへ倒れてしまった。
 拷問というほどのことではなかったのだが、房枝はそれをひどく突き詰めて考えたのだった。そして、二度までも軽い脳貧血を起こした。しかし、房枝はそのまま家に帰されなかった。そしてその夕方、房枝の父親が学校に呼ばれた。校長と首席訓導の吉川先生と、受持ち教員の鈴木先生にそれに房枝の父親が加わった四人で、房枝の口からなんらかの言葉を引き出そうというのだった。
「お房! おめえどうしても言わねえんなら、おめえの口を引き裂いてしまうぞ!」
 父親がこう言って房枝の肩に手をかけた。
「まあ、まあ、そうまでしなくても……」
 校長
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