やれ。お前さんは始終他の女といいことをしてるじゃないか、と言ったのが始まりで、とうとう喧嘩をして、寺を追い出されたと言うのであった。
私は、再度生老人からもらった天神様の画像に、毎朝お燈明をあげて、お辞儀をしてから学校へ出掛けた。そして、あの爺さんはどうしたろうと、再度生老人のことを思い出さないことはなかった。
或る日のこと、だしぬけに再度生老人がやって来た。
その時、私と母とは、火を焚いてあたっていたが、私は、再度生老人は寺を追い出されて、どこへ行っても泊まるところがなくて、私の家に泊まりに来たのだなと思った。で私は、母に、可哀想な老人を、どうぞ泊めてやってくれと頼んだ。
だが再度生老人は、私の家に這入って来るとすぐに、「あの、この間お前さんに描いてやった菅公の絵を、ちょっと貸してくれ。そら、天神様の絵じゃ。」と言った。
私は呆気《あっけ》に取られた。きっと取り返されるのかも知れないと思った。それでも、仕方がないので、壁から剥《は》がして来て彼に渡した。
「近頃あるところで、天神様の絵を見たが、どうもわしの描いた天神様は、髯《ひげ》が気に入らんのでの。」と言って、再度生老
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