休養していた方がいいように聴《き》かされたからであった。私は前々から文学に心を動かされていたのであったが、私の意志の薄弱なところへ持って来て四辺《あたり》の人々がみんな、文学をやりたいという私の希望に不賛成だったので、私はそれまで学校を更《か》えて見たり、目的を改めて見たりばかりしていた。だが、二年もぶらぶら遊ぶことになると、その間に独学ででも文学をやるとしたら、何か掴《つか》むところがあるだろうと思った。で到頭、文学をやることに決心した。
今村家で大変可愛がられていた私は、令息の学郎さんから、読みたいと言えば、大抵の本は求めてもらうことが出来たので、学校の方も一生懸命やる約束で求めてもらうのではあったけれども、私は学校の方は怠《なま》けて落第しそうになりながらも、文学の本ばかり読み耽《ふけ》っていた。馬島病院にいた頃にも、やはり学郎さんから種々な本を買ってもらって読んだ。福田病院では、附添《つきそい》に来てくれた美波さんという看護婦が文学好きだったので、私が未だ読書を制《と》められていた頃から、毎日のように読んでもらっていた。そんなこんなのことが、私を文学へと引っぱって行った。
前へ
次へ
全12ページ中2ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐左木 俊郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング