方へ一斉に集まって来た。嘉三郎は手で髭を隠すようにした。
「あの、高橋治平さんという人の家は、どの辺だね?」
嘉三郎は、そう酒を運んで来た茶屋女に、髭を隠すようにしながら訊いた。
「すぐこの先でがす。三軒、四軒、五軒、六軒目の家でがす。饂飩屋《うどんや》ですぐ判ります。」
「その家には、離室《はなれ》でも、別にあるのかね?」
「離室って、前に、馬車宿をしてたもんだから、そん時の待合所を奥さ引っ込んで、どうにか人が寝泊まり出来るように拵《こしら》えたのがあるにはあんのでがすけど、今のどころ、他所者《よそもの》の若夫婦が借りてるようでがす。」
「お! 一栗の嘉三郎|旦那《だんな》じゃねえかね?」
突然、そう誰かが、薄暗い土間から立ちあがった。
「私かね? 私は古川の者ですよ。古川の繭商人《まゆあきんど》ですよ。」
嘉三郎はぎょっとしながら、髭を隠して、声色《こわいろ》を使ってそう言った。
「併し、よく似た人だがなあ。」
印半纏《しるしばんてん》の土工風の男は首を傾《かし》げながら言った。
併し、嘉三郎は、そのまま何も言わずに、残っている冷酒《ひやざけ》を一息にあおると、忙《せわ》
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