喫煙癖
佐左木俊郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)豊平《とよひら》
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(例)[#ここから9字下げ]
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札幌の場末の街、豊平《とよひら》を出た無蓋二輪の馬車が、北を指して走っている砂利道を、月寒《つきさっぷ》の部落に向けてがたごとと動いて行った。
馬車の上には二人の乗客が対《むか》い合って乗っていた。二人とも、いずれも身すぼらしい身装《みなり》で、一人は五十近い婆《ばあ》さんであった。一人はやはり、同じ年ごろの爺《じい》さんであった。
爺さんは引っ切りなしに、煙草を燻《くゆ》らしていた。その煙がどうかすると、風の具合で、婆さんの顔にかかった。婆さんはそのたびに横を向いて、その煙を避けようとした。
「これはどうも、貴女《あなた》の方へばかり、煙を吹きかけるようで……」
爺さんは軽く頭をさげながら言った。しかし、爺さんは、やはりそのまま煙草を吸い続けるのだった。
「煙がかかってようござんすよ。かまいませんよ。煙草の好きな方は仕方がございませんもの。」
婆さんは微笑をもって言うのだった。
「
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