ど、その土地に在る植物の美を知るには、その植物それぞれの所生の状態、季節や気象に伴うて現わす変化、又は花と昆虫、或いは果実と鳥との関係というように、一々その自然との関係に就いて観察する必要があると思う。
福寿草
福寿草《ふくじゅそう》は敏感な花です。最も鋭敏に温度を感ずる野草です。福寿草は残雪のまばらな間から微《かす》かな早春の陽光《ようこう》をあびて咲き出るのです。そしてとても光に感じ易く、光を憧《あこが》れる花なのです。夜明けの微光とともに開いて、夜の暗さとともに眠るのです。太陽の輝きが燦爛《さんらん》たれば燦爛《さんらん》たるほど元気で、曇れば福寿草も元気なく項垂《うなだ》れます。寒さと暗さとをおそれる臆病《おくびょう》な花だけに、あどけなく可愛らしい花です。
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春の訪《おとず》れを最も早く感ずるのは、あらゆる野草のうちで福寿草が一番早いような気がします。朝の縁先《えんさき》に福寿草のあの黄金色《こがねいろ》の花が開いているのを見ると、私達はなんとなく新春の気分に浸《ひた》って来ます。また、それとは反対に、春になっても、福寿草の花が咲かないと、陽
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