り言って。昔なんか、蝙蝠だって、よっぽどいい人でねえど持たなかったんだ。贅沢ばり言って……」
爺さんは、眼を三角にして横を向いた。
「水色? あんなもんでも、随分|高《たげ》えもんだべでや?」
「五円ぐれえ出せば……」
「五円や?」春吉は驚いたように言って、「五円なら、山の草|手間《てま》十日分でねえが? そんな高えもの、とっても我々にゃあ……」
「贅沢ばり言って! ほだから見ろ。なんぼ稼えでも、貧乏ばりしてねえげなんねえ。みんな町さばり持ってかれで……」
爺さんは、ますます口を尖《と》がらした。
「この辺《へん》で、俺ばんだ持ってねぇの。」
「そんなに高《たげ》えもんなら、来年になってからでも、買ってもらうんだや。」と、婆さんはやさしく言った。
「そんなもの持だなげえ、お祭りさ行かれねえごったら、明日は、お祭りさ行かねえで、家の田の草でも取れ!」
爺さんは怒鳴りながら煙管《きせる》で炉端《ろばた》を叩いた。父親の春吉は、もう何も言わなかった。深く考え込むようにして煙草を吸った。
四
菊枝は襟《えり》を弄《いじ》りながら表へ出て行った。
「ほんじゃ汝《にし》あ、片
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