「あ、そうが! そいつは大助がりだ。」
爺さんは、初めて無愛想な面構えをほどいた。菊枝も大変嬉しかった。
この爺さんは、昔は非常な働き手だった。二人前出来ないことは、たった一つ、使い歩きだけで、いっぺんに、西へ行ったり、東へ行ったりすることが出来ないから……と言われたほどの働き手だった。事実どんな仕事でも、大抵は二人前近く働いたものだった。が爺さんは、老衰の峠を越してから、急に怠《なま》け者の中へ数えられるようになった。
それでも爺さんは、倅《せがれ》の春吉と、孫の菊枝とが、毎日のように日傭《ひでま》稼ぎに行くので、僂麻質斯《リュウマチス》の婆さんに攻め立てられ、老衰した身体《からだ》を、まるで曳きずるようにして、一日に二回ずつは、草を刈りに出なければならなかった。
「ふんとに俺は、棺桶《がんばこ》さ入《へ》えるまで、こうして稼がねえばなんねえんだな……」
こう言って爺さんは、毎日草を刈りに出なければならなかった。あんなに働いた爺さんだったけれども、いくら若い時働いたことを、今の若い人達に自慢して見たところで、爺さんは、金鵄《きんし》勲章《くんしょう》も、恩給証書ももらってい
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