狂馬
佐左木俊郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)炭坑の坑《あな》は
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二三匹|繋《つな》がれた。
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)手綱《たづな》[#「手綱」は底本では「手網」]
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炭坑の坑《あな》は二つに区別されている。竪坑《たてこう》。斜坑《はすこう》。――地上から地下へ垂直に、井戸のように通うているのが竪坑で、斜坑は、地上から地下へ、勾配《こうばい》になって這入《はい》って行くのだから樹木に掩《おお》われた薄暗い坂路《さかみち》を連想《れんそう》させる。
斜坑は、動物の通路を第一の目的として掘られたものであろう。炭坑に蒸気機関や電動機の採用されていなかったころ、人間の肩や背の他には、馬が一切の労働力を供給していたのだから。炭坑に機械力が這入って来てから、馬は、次第に廃《すた》れて行ったのであるが、古くからの炭坑へ行くと、今でも、馬の残っているところがある。
青《あお》!(その馬は若い時からそう呼びならされていた。)
青は鉱山主の温情主義から、坑《あな》の中
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