、おれ以上に変わるさ」
「おっ! 口が利けなくなって帰ってきたのかと思ったら、そういうわけでもないんだな?」
「おりゃあ、悪魔になってきた」
「悪魔に? それは面白いね」
 敬二郎は侮蔑的な微笑をもって言った。
「面白いことになるだろうとも。面白くて面白くて、涙が出るほど面白いことになるだろうから、待っているといいさ」
 正勝は投げ出すように言って、厩舎の前から放牧場のほうへ向けて歩きだした。
「正勝くん! きみはいま、ぼくのうえにも大変な変化があるようなことを予言したね。いったい、それはどんな意味なんだ?」
 敬二郎はそう言いながら正勝の後をついていった。しかし、正勝は黙っていた。黙々として正勝は鞭を振りながら、放牧場のほうへ歩いていった。
「正勝くん! どんな意味なのかはっきりと言わなくちゃ、何のことだか分からないじゃないか?」
「いまに分かるさ」
「いまに分かるって?」
「分るまいとしたって、いまに分からずにはいられなくなるのさ」
「何をいいかげんなことばかり言っているんだ」
 敬二郎は自暴自棄的に叫んだ。
「そんな風に考えてるうちが幸福なのさ。いまに、夢にもそんなことは考えられ
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