とは、兄弟のようにしていたんだぞ」
「兄弟のようにして、ほとんど共同事業のようにして牧場と農場とを始めて、それが成功しかけてくると、相手がいたんではそれから上がる利益が自分の勝手にならねえもんだから邪魔になってきて、そのためにってこたあだれだって知っているんだ。利益の分配のことについてだけだったら、場合によっちゃあ秘密に隠しおおせたかもしれねえさ。しかし、おれらの親父は小作人たちには味方していたんだ。小作人たちが内地から移住してきたときに、開墾について小作人たちに約束したことは、生命《いのち》に懸けても枉《ま》げようとなんかしていなかったんだ。開墾地の人たちが自分のものとして開墾したところはあくまでもその人たちのもの、地主の耕地として開墾したところは地主のものって区別をはっきりと立てていたんだ。それを欲の皮を突っ張って、自分の名義で払い下げた土地だっていう口実で、当然開墾地の人たちの土地であるべきところまで小作制度にしようとしたんじゃねえか? それにゃあ、仲へ立って小作人たちの味方になって正義の道を踏んでいこうとするおれらの親父が邪魔になったんだ。邪魔になったから狩りに連れ出して谷底へ
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