、それこそ余計なお世話だったんだ」
「余計なお世話だと? 余計なお世話かはしんねえが、もしあん時にだれも世話する者がなかったら、てめえら母子《おやこ》はどんなになっていたか、それを考えてみろ!」
「ふん! そんなこたあさんざんぱら考えていらあ。おれらの親父は何のために死んだか? だれのために殺されたか? そして、お袋はおれらを育てるためにどうしたか? なぜ自殺したか? だれのために自殺したか? そんなこたあ何もかも知っていらあ。おれらの親父は過ってあの谷底へ落ちたんでも、自殺したんでもねえんだ。突き落とされたんだ。自分の財産のために、自分の財産を肥やすために、おれらの親父を突き落とした奴《やつ》がいるんだ。おれらの親父は開墾地の小作人たちのために、正義の道を踏もうとして地主の奴から谷底へ突き落とされたってこたあ、おればかりじゃなく、だれだって知っていることなんだ」
「地主のために? てめえはそれじゃ、てめえの親父を殺したのがおれだっていうのか?」
喜平はさすがに顔色を変えながら叫んだ。
「もちろん!」
正勝は鋭く太く叫び返した。
「そんな馬鹿なことがあるもんか? てめえの親父とおれ
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