いるのよ」
「そんなことは信じないけども、おれだけは、おれだけは紀久ちゃんのこと、昔と同じように思っているんだ。友達で一緒に遊んでいた時分のことなんか考えると、おれは紀久ちゃんを死なせたくなんかないんだ。でもなかったら、おれだってもうどこかへ行ってしまっていたかもしれないんだ。ただ、紀久ちゃんのいる近くにいて、いつまでもいつまでも紀久ちゃんを見ていたいからこそ、おれはこうしているんだ。たとえ紀久ちゃんが結婚をしてしまっても、おれはやはり紀久ちゃんの傍を離れられねえような気がするんだ。奴隷のようにされても、牛馬のように思われても、やはりおれは紀久ちゃんの傍にいたいんだ。おれはやっぱり、いつまでもいつまでも紀久ちゃんを生かしておきたいんだ。紀久ちゃんが死んだからって、蔦が生き返るわけでもあるまいし……」
「でも、わたし、人を殺したんだから、わたしも殺されるのが本当だと思うわ。殺されないまでも、わたし、何年も何年も監獄に繋《つな》がれることなんか考えると、かえって殺されたほうがいいわ。正勝ちゃん! わたしを殺してよ! ねえ!」
紀久子は泣きだしそうにして言うのだった。
「大丈夫だ! 心配す
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