地の人たちはでたらめな歌を歌いながら、徳利や盃を叩き鳴らした。
「お嬢さまは、いよいよ気が変だぞ」
 喜代治は徳利を叩きながら、傍らの与三|爺《じい》の耳へそっと囁《ささや》いた。
「おれも、さっきからそう思って見てるところだ」
 その時、紀久子がばったりと倒れた。
「どうした? 紀久ちゃん! どうした?」
 正勝は狼狽《ろうばい》しながら屈み込んだ。
「なんでもないの」
「顔色が悪い」
「なんでもないのよ」
 紀久子はそう言って、すぐ起き上がった。
「しかし、ばかに顔色が悪い。帰ろう」
「なんでもないのだけど……」
「どこが悪いんだ。真っ青だよ。帰ろう」
 正勝は狼狽しながら紀久子の肩に手をかけて、静かにそこを出ていった。

       4

 奥の洋室まで、正勝は紀久子について入っていった。
「あらっ!」
 紀久子は驚きの声を上げて戸口に立った。
 ストーブが赤々と燃えていて、その傍《そば》に敬二郎がばったりと倒れていた。胸のところから血が流れて、ストーブと熊の皮の敷物との間の敷板が真っ赤な血溜《ちだま》りになっていた。そして、その手には黒いピストルを固く握っていた。
「死んでい
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