おやじ》さんの代に、はあ、敬二郎さんという人が約束になっているので、いまさらそれができねえもんだから、敬二郎さんを殺してしまうようなことでも考えているんじゃねえのか? それで、おれたちさ金をくれておいて、おれたちを味方にするつもりじゃねえのかな?」
喜代治は首を傾《かし》げながら、心配そうに言った。
「それさなあ?」
彼らはそう言って顔を見合わせた。
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第九章
1
憂鬱《ゆううつ》な曇天が、刺すような冷気を含んで広がっていた。しかし、敬二郎は火の気のないコンクリートの露台に出て、激しい憎悪と不安と憂鬱とに胸を爛《ただ》らしながら正勝の来るのを待っていた。
(いったい、紀久ちゃんはおれと正勝との、どっちを愛しているのだろう?)
敬二郎はそれを考えると、じっとしてはいられなくなってくるのだった。紀久子が正勝の命のままに動いて、吾助茶屋まで金を届けに行ったことを聞いてからというもの、敬二郎の不安と憂鬱とがなおひとしお激しくなってきた。同時に、正勝に対する憎悪が敬二郎の頭には火の車のように駆け巡っていた。五臓六腑《ごぞうろっぷ》の煮え繰り返るよう
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