どうも、お嬢さまは少し気が変になっているようじゃねえかな?」
喜代治が低声に言った。
「それさよ。いくらなんでも、森谷家のお嬢さまが正勝の手紙一本で大金を持って駆けつけてきたり……」
「酒を飲んで踊りを踊るなんて、気がどうかしていなけりゃ……」
「正勝さんが偉いからだよ。それで、正勝さんの言うことなら、お嬢さまはなんでも聞くのだよ」
吾助爺がぼっそりと言った。
「しかし、正勝さんも少し気がどうかしているのじゃないかなあ。理由《わけ》もなく他人さ大金を分けてくれたりしてさ」
与三爺が目を瞠りながら言った。
「気が変になったのじゃなくて、おれらを騙《だま》すつもりじゃねえのか? 金をくれておいて、何か問題でも起きたときにおれたちを味方にするとかなんとか……」
「そんなことはねえ。お嬢さまは自分の親御は殺されるし、自分は過って他人を殺したので、気が変になったのさ。正勝さんだって、妹があんなことになったんだから、やっぱり気が少しどうかしたんだよ」
初三郎爺が水洟《みずばな》を押し拭いながら言った。
「どうも、少し変だなあ。正勝さんと紀久子さんとは、自分たちは一緒になりてえんだが、親父《
前へ
次へ
全168ページ中148ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
佐左木 俊郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング