「どうする?」
「追いかけましょう」
「おい! 追っかけよう。野郎を谷底へ投げ込んでしまえ?」
常三がそう叫びながら、二人の前に駆け戻ってきた。
「それじゃ、銘々に鉄砲を持って……」
敬二郎はそう言いながら、厩舎の中へ駆け込んだ。
厩舎の中には、三匹の馬が鞍《くら》を置いて隠されていた。猟銃も弾嚢帯《だんのうたい》と一緒にそこに置かれてあった。三人は胴に弾嚢帯を巻きつけると、銃を握って馬に跨《またが》った。
「山の中へ、山の中へ追い込むようにしなけりゃ!」
敬二郎はそう言って、花房の胴にぐいっと拍車を打ち込んだ。三匹の馬は黒土を蹴起《けお》こしながら駆けだした。
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第七章
1
砂煙を蹴上《けあ》げながら、毬《まり》のように駆け飛んで吾助茶屋《ごすけぢゃや》の前まで来ると、正勝は馬の背にしがみつくようにしながらぐっと手綱を引いた。馬は喘《あえ》いで立ち上がるようにしながら止まった。次の瞬間、正勝はぱっと身を翻して道の上へ飛び下りた。そして、正勝は馬をそのままにしておいて、茶屋の中へ飛び込んだ。
茶屋の中の薄暗い土間には、開墾場の人たち
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