みつけながら帰って来た。
福治爺は、豚小屋のような、小さくって穢い家の中で、炉端に犬の皮を敷いて、垢に汚れたどてらを著込んで、梟《ふくろう》が身顫いした時のように、丸くなって、焚火に腹を焙《あぶ》って居た。
「なんぼか、掘って来たか?」と彼は、胸のところをはだけて、焚火の上に突出しながら言った。
「ろくな芋|無《ね》えがった……」
モセ嬶は、坏と芋を竈のところに置いて、福治爺の傍へ寄って行った。
「ほだども。仲仲掘れるもんでねえ、慣れねえうぢ……」
「それ代り、蛇とって来た。それ蛇!」と彼女は、彼の首へ、蛇のような形と色と、ひやりっとした肌触りの、汚れた縄切れを捲きつけた。
「なんだと?」と福冶爺は、狼狽《あわ》てて首に手をやったが、それきり気を失って、焚火の中に倒れた。
彼女は、うまく喫驚させたと思って、暫くは、ほったらかして見ていた。しかし、彼女の計企は当がはずれた。彼は、胸と顔面と、両手とを、ひどく焼傷《やけど》したきりであった。
福治爺の間歇熱は、もとのままで、癒りはしなかった。
福治爺は、間歇熱が引いてからも、焼傷のために、暫くの間、山芋を掘りに出掛けて行くことが出
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