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〔譯〕人は須らく忙裏《ばうり》に間《かん》を占《し》め、苦中《くちゆう》に樂《らく》を存ずる工夫を著《つ》くべし。
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〔評〕南洲岩崎谷洞中に居る。砲丸雨の如く、洞口を出づる能はず。詩あり云ふ「百戰無[#レ]功半歳間、首邱幸得[#レ]返[#二]家山[#一]。笑儂向[#レ]死如[#二]仙客[#一]。盡日洞中棋響間」(編者曰、此詩、長州ノ人杉孫七郎ノ作ナリ、南洲翁ノ作ト稱スルハ誤ル)謂はゆる忙《ばう》中に間を占むる者なり。然れども亦以て其の戰志無きを知るべし。余句あり、云ふ「可[#レ]見南洲無[#二]戰志[#一]。砲丸雨裡間牽[#レ]犬」と、是れ實録《じつろく》なり。
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九四 凡區[#二]處人事[#一]、當[#下]先慮[#二]其結局處[#一]、而後下[#上レ]手。無[#レ]楫之舟勿[#レ]行、無[#レ]的之箭勿[#レ]發。
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〔譯〕凡そ人事を區處《くしよ》するには、當さに先づ其の結局《けつきよく》の處を慮《おもんぱ》かりて、後に手を下すべし。楫《かぢ》無きの舟は行《や》る勿《なか》れ、的《まと》無きの箭《や》は發《はな》つ勿れ。
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九五 朝而不[#レ]食、則晝而饑。少而不[#レ]學、則壯而惑。饑者猶可[#レ]忍、惑者不[#レ]可[#二]奈何[#一]。
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〔譯〕朝《あさ》にして食《くら》はずば、晝《ひる》にして饑《う》う。少《わか》うして學ばずば、壯にして惑《まど》ふ。饑うるは猶|忍《しの》ぶ可し、惑《まど》ふは奈何ともす可からず。
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九六 今日之貧賤不[#レ]能[#二]素行[#一]、乃他日之富貴、必驕泰。今日之富貴不[#レ]能[#二]素行[#一]、乃他日之患難、必狼狽。
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〔譯〕今日の貧賤《ひんせん》に素行《そかう》する能はずば、乃ち他日の富貴《ふうき》に、必ず驕泰《けうたい》ならん。今日の富貴《ふうき》に素行《そかう》する能はずんば、乃ち他日の患難《くわんなん》に、必ず狼狽《らうば
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