暑さにも堪へる力を失ひ、少し暗いと眼が利かなくなり、跣足では一歩も歩けないまで退化して、一生を不愉快に過ごすやうにさせて行くことを、單に収入と支出とが増加することを、そして魂が落着を失ふことを、生活が不安定になることを、富を増進さすことを信じてゐる、小利口さ、馬鹿さで、憎むべき罪惡を島民に對して犯してゐるのが、やうやく魂の故郷を見付けた氣持でゐる私に取つては、堪らなく癪でもあり苦痛でもあります。私は佐渡のほんとうの識者、學問があるとか金があるとか利口だとか言ふので無くほんとうに生きてゐる人達――さう言ふ人達はことに佐渡に澤山殘つてゐるのだから――さう言ふ人達が、すべての文化的惡宣傳に載せられず、頑固に野蠻未開を守護して文三の歸るまでやはり同じ大きな聲でおけさをうたつてゐて貰ひたいと思つて居ます。
底本:「明星」「明星」發行所
1926(大正15)年8月
初出:「明星」「明星」發行所
1926(大正15)年8月
入力:江南長
校正:小林繁雄
2009年5月3日作成
2009年6月5日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http
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