を着た女の子が澤山中央線の電車に乘つてゐました。
しかし一方には半洋袴を穿いて尾久の假屋から市内の燒跡まで食べ物を賣りに家内中で脊負つて出るのも居ました。
二晩か三晩恐ろしく寒い晩があつたので、布團を脊負つて遠方の親戚に運ぶものも居ました。
郊外で東京の言葉が聞かれました。
華美な洋裝をした上方の女と男とを見ると撲りたくなるやうな氣分もありました。
折折襲つて來る秋の氣候を防ぐだけの着物さへ持たない人と頓狂なほど派手ななりをした人とが不調和と亂雜とで玩具箱を引繰覆しては居ましたが、大體セルやネルの季節だつたのでした。
私は佐渡へ行くと言ふので途中輕井澤邊の寒さを豫想して冬服の上に秋外套を引つかけて出ました。
上野驛には手荷物預所も出來てゐませんでした。
御名殘に上野の山から市中を見渡しました。海の上に漁船が澤山出てゐる時のやうな感じがする眺でした。
三等の外乘らない私が上野からだと言ふので二等に乘つたのでしたが、三等でも樂な位にすいてゐました。
驛前に新聞を賣つてゐる子供の數は大したものでした。それがカオオルを賣りに出る子供や讚岐の孤兒院の子供のやうな職業的の厭な點
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