る處です。
石灰岩と石英とは色色の佐渡の不思議を作り出してゐます。
試みに相川の濱に出て、紫石英や水晶や瑪瑙や赤玉や青玉や、自然金のついた小石や斷層を鮮に見せた小石や火山彈などを拾ふついでに、濱邊一帶を白く見せてゐる燧石をも手に取つて御覽なさい。大抵の燧石には穴があいてゐましてその穴の中には無數の水晶か動物の齒のやうに上下左右から出てゐます。なるべく純粹に近い石灰岩で出來てゐる大岩の穴に這入つて岩を毀いて御覽なさい。折折京丸牡丹のやうに中のうろ一向に花片を出してゐる水色や褐色の鐘乳石を見られます。
小さな島でありながら蛇紋石の小島もあり、水石ばかりで出來た岬もあり、地表に石炭の露出して居る處もあり、瑪瑙の壁もあり、黒曜石もあり、砂岩もあり粘板岩もあり、猿の尻のやうな土の覗いてゐる處もあります。そして東京邊の新聞に出ないでしまふこともあり、出ても注意せられずに忘れ去られてしまふのでせうが、絶えず處處に土地の隆起や之に伴ふ陷沒が起つて居ります。
一體佐渡と言ふところは昔から狐のゐない處ださうでして、その代りに貉が住んで居るのです。もつとも動物は放牧してある牛以外には、どんな山奧へ行つ
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