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〔譯〕經《けい》を讀むは、宜しく我れの心を以て經の心を讀み、經の心を以て我の心を釋《しやく》すべし。然らずして徒爾《とじ》に訓詁《くんこ》を講明《かうめい》するのみならば、便《すなは》ち是れ終身|曾《かつ》て讀まざるなり。
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六七 引[#レ]滿中[#レ]度、發無[#二]空箭[#一]。人事宜[#二]如[#レ]射然[#一]。
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〔譯〕滿《まん》を引《ひ》き度《ど》に中《あた》り、發して空箭《くうぜん》無し。人事宜しく射《しや》の如く然るべし。
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六八 前人、謂[#二]英氣害[#一レ]事。余則謂、英氣不[#レ]可[#レ]無、但露[#二]圭角[#一]爲[#二]不可[#一]。
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〔譯〕前人は、英氣《えいき》は事を害《がい》すと謂へり。余は則ち謂ふ、英氣は無かる可らず、但《た》だ圭角《けいかく》を露《あら》はすを不可と爲すと。
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六九 刀槊之技、懷[#二]怯心[#一]者衄、頼[#二]勇氣[#一]者敗。必也泯[#二]勇怯於一靜[#一]、忘[#二]勝負於一動[#一]。動[#レ]之以[#レ]天、廓然太公、靜[#レ]之以[#レ]地、物來順應。如[#レ]是者勝矣。心學亦不[#レ]外[#二]於此[#一]。
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〔譯〕刀槊《たうさく》の技《ぎ》、怯《きよ》心を懷《いだ》く者は衄《くじ》け、勇氣《ゆうき》を頼《たの》む者は敗《やぶ》る。必や勇怯《ゆうきよ》を一|靜《せい》に泯《ほろぼ》し、勝負《しようぶ》を一|動《どう》に忘《わす》れ、之を動《うご》かすに天を以てして、廓然《かくぜん》太公《たいこう》に、之を靜《しづ》むるに地を以てして、物《もの》來つて順應《じゆんおう》せん。是《かく》の如き者は勝《か》たん。心學も亦|此《こゝ》に外ならず。
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〔評〕長兵京師に敗《やぶ》る。木戸公は岡部氏に寄《よ》つて禍《わざはい》を免《まぬか》るゝことを得たり。後《のち》丹波に赴《おもむ》き、姓名《せいめい》を變《か》へ、博徒《ばくと》に混《まじ》り、酒客《しゆかく》に交《まじは》り、以て時勢を窺《うかゞ》へり。南洲は浪華《なには》の某樓に寓《ぐう》す。幕吏|搜索《さうさく》して樓下に至る。南洲乃ち劇《げき》を觀るに託して、舟を※[#「にんべん+就」、第3水準1−14−40]《か》りて逃《に》げ去れり。此れ皆|勇怯《ゆうきよ》を泯《ほろぼ》し勝負《しようぶ》を忘るゝものなり。
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七〇 無[#レ]我則不[#レ]獲[#二]其身[#一]、即是義。無[#レ]物則不[#レ]見[#二]其人[#一]、即是勇。
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〔譯〕我《わ》れ無ければ則ち其身を獲《え》ず、即ち是れ義《ぎ》なり。物無ければ則ち其人を見ず、即ち是れ勇《ゆう》なり。
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七一 自反而縮者、無[#レ]我也。雖[#二]千萬人[#一]吾往矣、無[#レ]物也。
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〔譯〕自ら反《かへり》みて縮《なほ》きは、我《われ》無きなり。千萬人と雖吾れ往かんは、物無きなり。
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七二 三軍不[#レ]和、難[#二]以言[#一レ]戰。百官不[#レ]和、難[#二]以言[#一レ]治。書云、同[#レ]寅協[#レ]恭和衷哉。唯一和字、一[#二]串治亂[#一]。
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〔譯〕三軍和せずば、以て戰《たゝかひ》を言ひ難《がた》し。百官和せずば、以て治《ち》を言ひ難し。書に云ふ、寅《いん》を同じうし恭《きよう》を協《あは》せ和衷《わちゆう》せよやと。唯だ一の和字、治亂《ちらん》を一串《いつくわん》す。
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〔評〕復古《ふくこ》の業《げふ》は薩長《さつちやう》の合縱《がつしよう》に成る。是れより先き、土人坂本|龍馬《りゆうま》、薩長の和せざるを憂《うれ》へ、薩|邸《てい》に抵《いた》り、大久保・西郷諸氏に説き、又長邸に抵《いた》り、木戸・大村諸氏に説く。薩人黒田・大山諸氏長に至り、長人木戸・品川諸氏薩に往《ゆ》き、而て後|和《わ》成り、維新《いしん》の鴻業《こうげふ》を致《いた》せり。
[#ここで字下
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