〔譯〕周子《しうし》靜《せい》を主《しゆ》とす、心《こゝろ》本體《ほんたい》を守るを謂ふなり。※[#「圖」の「回」に代えて「面から一、二画目をとったもの」、52−12]説《づせつ》に、「欲《よく》無し故に靜《せい》」と自註《じちゆう》す、程伯氏《ていはくし》此《これ》に因つて天|理《り》人|欲《よく》の説《せつ》有り。叔子《しゆくし》敬《けい》を持《ぢ》する工夫《くふう》も亦|此《こゝ》に在り。朱陸《しゆりく》以下各|力《ちから》を得る處有りと雖、而《し》かも畢竟《ひつきやう》此の範圍《はんい》を出でず。意《おも》はざりき明儒《みんじゆ》に至つて、朱陸《しゆりく》黨《たう》を分つこと敵讐《てきしう》の如くあらんとは。何を以て然るや。今の學ぶ者、宜しく平心を以て之を待つべし。其の力を得る處を取らば可なり。
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六一 象山、宇宙内事、皆己分内事、此謂[#二]男子擔當之志如[#一レ]此。陳※[#「さんずい+晧」の「日」に代えて「白」、第3水準1−87−18]引[#レ]此註[#二]射義[#一]、極是。
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〔譯〕象山《しようざん》の、宇宙《うちう》内《ない》の事は皆|己《おの》れ分内《ぶんない》の事は、此《こ》れ男子|擔當《たんたう》の志|此《かく》の如きを謂ふなり。陳※[#「さんずい+晧」の「日」に代えて「白」、第3水準1−87−18]《ちんかう》此を引いて射義《しやぎ》を註《ちゆう》す、極《きは》めて是《ぜ》なり。
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〔評〕南洲|嘗《かつ》て東湖に從うて學ぶ。當時《たうじ》書する所、今猶民間に存《そん》す。曰ふ、「一寸《いつすん》の英心《えいしん》萬夫《ばんぷ》に敵《てき》す」と。蓋《けだ》し復古《ふくこ》の業《げふ》を以て擔當《たんたう》することを爲す。維新《いしん》征東の功《こう》實に此に讖《しん》す。末路《まつろ》再《ふたゝ》び讖《しん》を成せるは、悲《かな》しむべきかな。
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六二 講[#二]論語[#一]、是慈父教[#レ]子意思。講[#二]孟子[#一]、是伯兄誨[#レ]季意思。講[#二]大學[#一]、如[#二]網在[#一レ]綱。講[#二]中庸[#一]、如[#二]雲出[#一レ]岫。
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〔譯〕論語《ろんご》を講《かう》ず、是れ慈父《じふ》の子を教ふる意思《いし》。孟子《まうし》を講ず、是れ伯兄の季《き》を誨《をし》ふる意思《いし》。大學《だいがく》を講ず、網《あみ》の綱《かう》に在る如し。中庸《ちゆうよう》を講ず、雲《くも》の岫《しう》を出づる如し。
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六三 易是性字註脚。詩是情字註脚。書是心字註脚。
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〔譯〕易《えき》は是れ性《せい》の字の註脚《ちゆうきやく》なり。詩《し》は是れ情の字の註脚なり。書《しよ》は是れ心の字の註脚なり。
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六四 獨得之見似[#レ]私、人驚[#二]其驟至[#一]。平凡之議似[#レ]公、世安[#二]其狃聞[#一]。凡聽[#二]人言[#一]、宜[#二]虚懷而邀[#一レ]之。勿[#レ]苟[#二]安狃聞[#一]可也。
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〔譯〕獨得《どくとく》の見《けん》は私《わたくし》に似る、人其の驟至《しうし》に驚《おどろ》く。平凡《へいぼん》の議《ぎ》は公に似る、世其の狃聞《ぢうぶん》に安んず。凡そ人の言を聽《き》くは、宜しく虚懷《きよくわい》にして之を邀《むか》ふべし。狃聞《ぢうぶん》に苟安《こうあん》することなくんば可なり。
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六五 心理是豎工夫、愽覽是横工夫。豎工夫、則深入自得。横工夫、則淺易汎濫。
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〔譯〕心理《しんり》は是れ豎《たて》の工夫なり、愽覽《はくらん》は是れ横《よこ》の工夫なり。豎《たて》の工夫は、則ち深入《しんにふ》自得《じとく》せよ。横《よこ》の工夫は、則ち淺易《せんい》汎濫《はんらん》なれ。
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六六 讀[#レ]經、宜[#下]以[#二]我之心[#一]讀[#二]經之心[#一]、以[#二]經之心[#一]釋[#中]我之心[#上]。不[#レ]然徒爾講[#二]明訓詁[#一]而已、便是終身不[#二]曾讀[#一]。
[#ここから1字下げ、折
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