するの議《ぎ》あり。南洲等|力《つと》めて之を拒ぎ、事終に熄《や》む。南洲人に語《かた》つて曰ふ、七卿中他日|關白《くわんぱく》に任ぜらるゝ者は、必三條公ならんと、果して然りき。
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七 性同而質異。質異、教之所[#二]由設[#一]也。性同、教之所[#二]由立[#一]也。
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〔譯〕性《せい》は同じうして而て質《しつ》は異《ことな》る。質異るは教《をしへ》の由つて設《まう》けらるゝ所なり。性同じきは教の由つて立つ所なり。
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八 喪[#レ]己斯喪[#レ]人。喪[#レ]人斯喪[#レ]物。
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〔譯〕己《おのれ》を喪《うしな》へば斯《こゝ》に人を喪《うしな》ふ。人を喪へば斯に物《もの》を喪ふ。
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九 士貴[#二]獨立自信[#一]矣。依[#レ]熱附[#レ]炎之念、不[#レ]可[#レ]起。
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〔譯〕士《し》は獨立《どくりつ》自信《じしん》を貴《たふと》ぶ。熱《ねつ》に依《よ》り炎《えん》に附《つ》くの念《ねん》、起す可らず。
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〔評〕慶應《けいおう》三年九月、山内|容堂《ようだう》公は寺村|左膳《さぜん》、後藤|象《しやう》次郎を以て使となし、書を幕府に呈《てい》す。曰ふ、中古以|還《くわん》、政刑《せいけい》武門に出づ。洋人來航するに及んで、物議《ぶつぎ》紛々《ふん/\》、東攻西|撃《げき》して、内訌《ないこう》嘗て※[#「楫のつくり+戈」、第3水準1−84−66]《をさま》る時なく、終に外國の輕侮《けいぶ》を招《まね》くに至る。此れ政令《せいれい》二|途《と》に出で、天下耳目の屬《ぞく》する所を異にするが故なり。今や時勢一|變《ぺん》して舊規《きうき》を墨守《ぼくしゆ》す可らず、宜しく政|權《けん》を王室に還し、以て萬國|竝立《へいりつ》の基礎《きそ》を建つべし。其れ則ち當今の急務《きふむ》にして、而て容堂の至願《しぐわん》なり。幕《ばく》下の賢《けん》なる、必之を察《さつ》するあらんと。他日幕府の政權を還《かへ》せる、其事實に公の呈書《ていしよ》に本《もと》づけり。當時|幕府《ばくふ》既に衰《おとろ》へたりと雖、威權《ゐけん》未だ地に墜《お》ちず。公|抗論《かうろん》して忌《い》まず、獨立の見ありと謂ふべし。
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一〇 有[#二]本然之眞己[#一]、有[#二]躯殼之假己[#一]。須[#レ]要[#二]自認得[#一]。
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〔譯〕本然《ほんぜん》の眞己《しんこ》有り、躯殼《くかく》の假己《かこ》有り。須らく自ら認《みと》め得んことを要すべし。
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〔評〕南洲|胃《い》を病む。英醫|偉利斯《いりす》之を診《しん》して、勞動《らうどう》を勸《すゝ》む。南洲是より山野に游獵《いうれふ》せり。人或は病なくして犬を牽《ひ》き兎を逐《お》ひ、自ら南洲を學ぶと謂ふ、疎《そ》なり。
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一一 雲煙聚[#二]於不[#一レ]得[#レ]已。風雨洩[#二]於不[#一レ]得[#レ]已。雷霆震[#二]於不[#一レ]得[#レ]已。斯可[#三]以觀[#二]至誠之作用[#一]。
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〔譯〕雲煙《うんえん》は已《や》むことを得ざるに聚《あつま》る。風雨《ふうう》は已むことを得ざるに洩《も》る。雷霆《らいてい》は已むことを得ざるに震《ふる》ふ。斯《こゝ》に以て至誠《しせい》の作用《さよう》を觀《み》る可し。
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一二 動[#二]於不[#レ]得[#レ]已之勢[#一]、則動而不[#レ]括。履[#二]於不[#レ]可[#レ]枉之途[#一]、則履而不[#レ]危。
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〔譯〕已むことを得ざるの勢《いきほひ》に動《うご》けば、則ち動いて括《くわつ》せず。枉《ま》ぐ可らざるの途《みち》を履《ふ》めば、則ち履んで危《あやふ》からず。
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〔評〕官軍江戸を伐《う》つ、關西諸侯兵を出して之に從ふ。是より先き尾藩《びはん》宗家《そうけ》を援《たす》けんと欲する者ありて、私《ひそ》かに聲息《せいそく》を江戸に通《つう》ず。尾
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