は人臣の榮《えい》を極《きは》む。然り而して前後皆亂を爲し誅に伏す、惜しいかな。豈四|端《たん》の偏《へん》ありしものか。
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五一 此學吾人一生負擔、當[#二]斃而後已[#一]。道固無[#レ]窮、堯舜之上善無[#レ]盡。孔子自[#レ]志[#レ]學、至[#二]七十[#一]、毎[#二]十年[#一]、自覺[#二]其有[#一レ]所[#レ]進、孜孜自彊、不[#レ]知[#二]老之將[#一レ]至。假使[#二]其踰[#レ]耄至[#一レ]期、則其神明不[#レ]測、想當[#レ]爲[#二]何如[#一]哉。凡學[#二]孔子[#一]者、宜[#下]以[#二]孔子之志[#一]爲[#上レ]志。
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〔譯〕此の學は吾人一生の負擔《ふたん》、當《まさ》に斃《たふ》れて後に已《や》むべし。道固より窮り無し。堯舜の上、善盡くること無し。孔子學に志してより七十に至るまで、十年毎に自ら其の進《すゝ》む所有るを覺《さと》り、孜孜《しゝ》として自ら彊《つと》めて、老《らう》の將に至らんとするを知らず。假《も》し其をして耄《ばう》を踰《こ》え期《き》に至らしめば、則ち其の神明|測《はか》られざること、想《おも》ふに當に何如たるべきぞや。凡そ孔子を學ぶ者は、宜しく孔子の志を以て志と爲すべし。
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五二 自彊不[#レ]息、天道也、君子所[#レ]以也。如[#下]虞舜孳孳爲[#レ]善、大禹思[#二]日孜孜[#一]、成湯苟日新、文王不[#二]遑暇[#一]、周公坐以待[#レ]旦、孔子發[#レ]憤忘[#上レ]食、皆是也。彼徒事[#二]靜養瞑坐[#一]而已、則與[#二]此學脈[#一]背馳。
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〔譯〕自ら彊《つと》めて息《や》まざるは天道なり、君子の以《もち》ゐる所なり。虞舜《ぐしゆん》の孳孳《じじ》として善を爲し、大|禹《う》の日に孜孜せんことを思ひ、成湯《せいたう》の苟《まこと》に日に新にせる、文王の遑《いとま》あき暇《いとま》あらざる、周《しう》公の坐《ざ》して以て旦《たん》を待《ま》つ、孔子の憤《いきどほ》りを發して食を忘るゝ如きは、皆是なり。彼の徒《いたづら》に靜養《せいやう》瞑坐《めいざ》を事とすのみならば、則ち此の學脈《がくみやく》と背馳《はいち》す。
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五三 自彊不[#レ]息時候、心地光光明明、有[#二]何妄念游思[#一]、有[#二]何嬰累※[#「罘」の「不」に代えて「圭」、第4水準2−84−77]想[#一]。
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〔譯〕自ら彊《つと》めて息《や》まざる時候《じこう》は、心地《しんち》光光明明《くわう/\めい/\》にして、何の妄念《ばうねん》游思《ゆうし》有らん、何の嬰累《えいるゐ》※[#「罘」の「不」に代えて「圭」、第4水準2−84−77]想《けさう》有らん。
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〔評〕三條公の筑前に在る、或る人其の旅況《りよきやう》の無聊《むれう》を察《さつ》して美女を進む、公之を卻《しりぞ》く。某氏|宴《えん》を開《ひら》いて女|樂《がく》を設《まう》く、公|怫《ふつ》然として去れり。
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五四 提[#二]一燈[#一]、行[#二]暗夜[#一]。勿[#レ]憂[#二]暗夜[#一]、只頼[#二]一燈[#一]。
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〔譯〕一|燈《とう》を提《ひつさ》げて、暗夜《あんや》を行く。暗夜を憂《うれ》ふる勿れ、只だ一|燈《とう》を頼《たの》め。
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〔評〕伏水《ふしみ》戰を開き、砲聲《はうせい》大内《おほうち》に聞え、愈|激《はげ》しく愈|近《ちか》づく。岩倉公南洲に問うて曰ふ、勝敗《しようはい》何如と。南洲答へて曰ふ、西郷隆盛在り、憂ふる勿れと。
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五五 倫理物理、同一理也。我學[#二]倫理之學[#一]、宜[#三]近取[#二]諸身[#一]、即是物理。
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〔譯〕倫理《りんり》と物理とは同一理なり。我れ倫理の學を學ぶ、宜しく近く諸《これ》を身に取るべし、即ち是れ物理なり。
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五六 濁水亦水也。一澄則爲[#二]清水[#一]。客氣亦氣也。一轉則爲[#二]正氣[#一]。逐[#レ]客工夫、只是克[#レ]己、只是復[
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