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四四 學、稽[#二]之古訓[#一]、問、質[#二]之師友[#一]、人皆知[#レ]之。學必學[#二]之躬[#一]、問必問[#二]諸心[#一]、其有[#二]幾人[#一]耶。
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〔譯〕學《がく》之を古訓《こくん》に稽《かんが》へ、問《もん》之を師友に質《たゞ》すは、人皆之を知る。學必ず之を躬に學び、問必ず諸を心に問ふは、其れ幾人有らんか。
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四五 以[#レ]天而得者固。以[#レ]人而得者脆。
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〔譯〕天を以て得たるものは固《かた》し。人を以て得たるものは脆《もろ》し。
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四六 君子自慊、小人自欺。君子自彊、小人自棄。上達下達、落[#二]在一自字[#一]。
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〔譯〕君子は自ら慊《こゝろよ》くし、小人は自ら欺《あざむ》く。君子は自ら彊《つと》め、小人は自ら棄《す》つ。上|達《たつ》と下|達《たつ》とは、一の自《じ》の字に落在《らくざい》す。
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四七 人皆知[#レ]問[#二]身之安否[#一]、而不[#レ]知[#レ]問[#二]心之安否[#一]。宜[#下]自問[#中]能不[#レ]欺[#二]闇室[#一]否、能不[#レ]愧[#二]衾影[#一]否、能得[#二]安穩快樂[#一]否[#上]。時時如[#レ]是、心便不[#レ]放。
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〔譯〕人は皆身の安否《あんぴ》を問《と》ふことを知つて、而かも心の安否を問ふことを知らず。宜しく自ら能く闇室《あんしつ》を欺《あざむ》かざるや否《いな》や、能く衾影《きんえい》に愧《は》ぢざるや否や、能く安穩《あんおん》快樂《くわいらく》を得るや否やと問ふべし。時時|是《かく》の如くば心|便《すなは》ち放《はな》たず。
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〔評〕某士南洲に面《めん》して仕官《しくわん》を求《もと》む。南洲曰ふ、汝|俸給《ほうきふ》幾許《いくばく》を求むるやと。某曰ふ、三十圓ばかりと。南洲乃ち三十圓を與へて曰ふ、汝に一月《ひとつき》の俸《ほう》金を與へん、汝は宜しく汝の心に向《むか》うて我が才力《さいりき》如何を問ふべしと。其人|復《ま》た來らず。
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四八 無[#レ]爲而有[#レ]爲之謂[#レ]誠。有[#レ]爲而無[#レ]爲之謂[#レ]敬。
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〔譯〕爲す無くして爲す有る之を誠《まこと》と謂ふ。爲す有つて爲す無し之を敬《けい》と謂ふ。
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四九 寛懷不[#レ]忤[#二]俗情[#一]、和也。立脚不[#レ]墜[#二]俗情[#一]、介也。
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〔譯〕寛懷《かんくわい》俗情《ぞくじやう》に忤《さか》はざるは、和《わ》なり。立脚《りつきやく》俗情に墜《お》ちざるは、介《かい》なり。
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五〇 惻隱之心偏、民或有[#二]溺[#レ]愛殞[#レ]身者[#一]。羞惡之心偏、民或有[#下]自[#二]經溝涜[#一]者[#上]。辭讓之心偏、民或有[#二]奔亡風狂者[#一]。是非之心偏、民或有[#二]兄弟鬩[#レ]牆父子相訟者[#一]。凡情之偏、雖[#二]四端[#一]遂陷[#二]不善[#一]。故學以致[#二]中和[#一]、歸[#三]於無[#二]過不及[#一]、謂[#二]之復性之學[#一]。
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〔譯〕惻隱《そくいん》の心|偏《へん》すれば、民或は愛《あい》に溺《おぼ》れ身を殞《おと》す者有り。羞惡《しうを》の心偏すれば、民或は溝涜《かうとく》に自經《じけい》する者有り。辭讓《じじやう》の心偏すれば、民或は奔亡《ほんばう》風狂《ふうきやう》する者有り。是非の心偏すれば、民或は兄弟|牆《かき》に鬩《せめ》ぎ父子相|訟《うつた》ふ者有り。凡そ情の偏するや、四|端《たん》と雖遂に不善《ふぜん》に陷《おちい》る。故に學んで以て中和を致《いた》し、過不及《かふきふ》無きに歸《き》す、之を復性《ふくせい》の學と謂ふ。
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〔評〕江藤|新平《しんぺい》、前原|一誠《いつせい》等の如きは、皆|維新《いしん》の功臣として、勤王二なく、官は參議《さんぎ》に至り、位
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