ければ、縱令當時知る人無く共、後世必ず知己有るもの也。
三八 世人の唱ふる機會とは、多くは僥倖の仕當《しあ》てたるを言ふ。眞の機會は、理を盡して行ひ、勢を審かにして動くと云ふに在り。平日國天下を憂ふる誠心厚からずして、只時のはずみに乘じて成し得たる事業は、決して永續せぬものぞ。
三九 今の人、才識有れば事業は心次第に成さるゝものと思へ共、才に任せて爲す事は、危くして見て居られぬものぞ。體有りてこそ用は行はるゝなり。肥後の長岡先生の如き君子は、今は似たる人をも見ることならぬ樣になりたりとて嘆息なされ、古語を書て授けらる。
[#ここから2字下げ]
夫天下非[#(レバ)][#レ]誠[#(ニ)]不[#レ]動[#(カ)]。非[#(レバ)][#レ]才[#(ニ)]不[#レ]治[#(ラ)]。誠之至[#(ル)]者。其動[#(ク)]也速。才之周[#(ネキ)]者。其治也廣[#(シ)]。才[#(ト)]與[#レ]誠合[#(シ)]。然[#(ル)]後事[#(ヲ)]可[#(シ)][#レ]成[#(ス)]。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
四〇 翁に從て犬を驅り兎を追ひ、山谷を跋渉
前へ
次へ
全23ページ中15ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
西郷 隆盛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング