が併し其中には到底不可解の事と今日未可解の事との別もあるであらう、けれども古代に於けるスピノーザ氏と今日に於けるヘッケル氏等とが宇宙本體と認定したるマテリーとエネルギーとの合一體(Einheit der Materie und Energie)が實に宇宙本體であるに相違ないとするだけのことは決して不都合のないことと余は考へるのである、余が何故左樣に言ふ乎と云へば右マテリーとエネルギーとは始終變化はあつても其物それ自身は全く恆久的(konstant)で絶て生滅のないものであるといふことは近世化學と物理學とで發見されたのである、即ち自然科學の經驗上確證を得たことで決して想像説でも假定説でもないのである、それが果して全く生滅のないものである以上は如何にしても、それを他造物であるとすることの出來ぬのは言ふ迄もないことと思ふ、それゆへ余は此マテリーとエネルギーとの合一體を以て宇宙の本體とすることに就て聊も疑はぬのである、但し此説を抱く學者中に二派があつて一はマテリーを主としてエネルギーを屬とし又一はエネルギーを主としてマテリーを屬とするのであつて甲は即ちホルバフ氏やビユフネル氏の唯物論であり乙は
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