ーとエネルギーとのみであるといふことを知らねばならぬ。
 井上博士曰スペンサー氏もヘッケル氏も其他の進化論者も凡て機械主義であるが是れは隨分面白い點もある頗る痛快でもある、此主義では神が宇宙を造つたと歟又は神が宇宙の先き先き迄を見透して人間の運命を定めると歟いふ所謂目的主義を全然破壞するのであつて、それに代へるに自然淘汰性欲淘汰なる主義を以てして生物の生存競爭に依り其勝敗が定まつて乃ち淘汰が出來るといふことを説くのであるから實に痛快である、けれども余は茲に一の疑問がある、凡て進化といふことが全然一の目的なしに絶對機械的に出來るものであらう乎如何といふに、其れは甚だ疑はしい、抑進化なるものが單純から複雜に移り無秩序から秩序に到るといふのであるとすれば此進化なるものが決して偶然の出來事でないことは明かであつて全く法則的に出來るのである、して見るとそこに自然と目的が立つて居るやうに考へられるではない乎、尤も決して神の立てたやうな目的ではないけれども必ず進化の方針が定まつて居るやうに思はれるではない乎、進化は決して亂脈ではない必ず其道筋が定まつて居るに相違ないのである云云。
 評者曰一定不易の
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