情況下で演じられる犯罪方法の分類であるが、次には、兇行後それを密室内で行われた如くに思わせる方法で、即ち犯行後に於ける「密室の偽造」である。これに就いても作者カーは先ず殆んどの場合を網羅している。

「ドアと窓の二つのうち、ドアの方が遥かに使用例が多い。部屋の内部から密閉されていた如くに思わしめる方法として次のような例が挙げられる。
(一)、内側の鍵穴にある鍵をいじって密室とする類――これは昔から非常によく使われた方法だが、今日ではもう知られすぎているので到底真面目に使用することが出来ない。プライヤーを使って室外から鍵を廻わすのである。またよくある例は、二|吋《インチ》くらいの長さの細い金棒に紐を結びつけたのを使う。犯人が部屋を出る時に、この棒を恰度|梃《てこ》代りに[#「梃《てこ》代りに」は底本では「挺《てこ》代りに」]なるような風に鍵の頭の孔に上から刺しておく。紐の方は下に垂らし、これはドアの下から室外に出す。これでもうあとはドアの外から紐を引張りさえすれば金棒が廻転して錠がおりる。棒は紐を引いてゆすれば抜け落ちるからドアの下から引き出せばよい。
 この方法の応用は幾つかあるが、い
前へ 次へ
全12ページ中10ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
井上 良夫 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング